100人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
「高見沢、飲みに行かないか?」
そう声を掛けてくれたのは、同期で、わりと仲のいいやつ。名前は、福澤兼人。
「福澤、悪いんだけど、今日は、先約があるんだ。」
「そうか、残念だな。」
「本当に悪い。」
謝る俺に、福澤は、肩を竦めていた。
「しかし、お前、最近付き合い悪くなったんじゃないか?」
「すまない。いつも誘ってくれてるのに。ちょっと野暮用でさ、ここのところ、時間が足りないくらい忙しいんだ。」
「時間が足りないくらいの忙しいことってなんだよ?…ははぁん、さては、女だな。いつ彼女出来たんだ?」
「あのさ、知ってて言うの。」
「ああ、言うよ。前の彼女のことは、残念なことだと、俺は、思うよ。だけど、お前はさ、いつまでも、それにこだわって生きてくわけ?…そんなの無理だよ。どっかで、必ず誰かの手を取るんだ。」
「…そうなのかもしれないけど、今は、まだ、出来ないよ。」
「お前にそんだけ思われててさ、その彼女は、幸せもんだよな。」
そう言って、軽く笑った。
「それで、時間足りないくらいのお前の野暮用ってなんなの?」
「ごめん…今、話せない。でも、近い内に、ビックリさせるから楽しみにしてなよ。」
「今のお前、いたずらっ子みたいな楽しそうな顔してるぜ。じゃあ、期待せずに楽しみにしとくわ。」
「ああ。また、懲りずに、誘ってくれよな。」
「おう。じゃあな。」
福澤は、先に帰っていった。
で、俺はというと…。
「うわっ、まだ片付いてなかった。」
デスクを片付けると、速水との約束の場所へと向かうために、立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!