圭吾と彰

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「高見沢、飲みに行かないか?」 そう声を掛けてくれたのは、同期で、わりと仲のいいやつ。名前は、福澤兼人。 「福澤、悪いんだけど、今日は、先約があるんだ。」 「そうか、残念だな。」 「本当に悪い。」 謝る俺に、福澤は、肩を竦めていた。 「しかし、お前、最近付き合い悪くなったんじゃないか?」 「すまない。いつも誘ってくれてるのに。ちょっと野暮用でさ、ここのところ、時間が足りないくらい忙しいんだ。」 「時間が足りないくらいの忙しいことってなんだよ?…ははぁん、さては、女だな。いつ彼女出来たんだ?」 「あのさ、知ってて言うの。」 「ああ、言うよ。前の彼女のことは、残念なことだと、俺は、思うよ。だけど、お前はさ、いつまでも、それにこだわって生きてくわけ?…そんなの無理だよ。どっかで、必ず誰かの手を取るんだ。」 「…そうなのかもしれないけど、今は、まだ、出来ないよ。」 「お前にそんだけ思われててさ、その彼女は、幸せもんだよな。」 そう言って、軽く笑った。 「それで、時間足りないくらいのお前の野暮用ってなんなの?」 「ごめん…今、話せない。でも、近い内に、ビックリさせるから楽しみにしてなよ。」 「今のお前、いたずらっ子みたいな楽しそうな顔してるぜ。じゃあ、期待せずに楽しみにしとくわ。」 「ああ。また、懲りずに、誘ってくれよな。」 「おう。じゃあな。」 福澤は、先に帰っていった。 で、俺はというと…。 「うわっ、まだ片付いてなかった。」 デスクを片付けると、速水との約束の場所へと向かうために、立ち上がった。
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