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「…治らないんですか?」
「ある程度まで、状態を良くすることは出来ますが、体に、かなり負担が掛かっていますからね、今まで通りの生活は、無理だと思ってください。
お母様は、職場への復帰を望んでいらっしゃるが、今の状態では、お勧めできませんね。無理すれば、命に関わりますよ。」
親子二人で、生きていくために、お袋は、かなりの無理をしていたのだ。
だけど、俺は、そんなことにも気付かず、我が儘を平気で言っていた。
いつだって、俺の言葉を黙って聞いてくれていたお袋の努力なんて、考えたこともなかった。
「…なんて顔してるの圭吾。あんたが、そんな顔したって、私の病気が治る訳じゃないでしょ。私が、すぐに死ぬわけじゃなし、やれることやるだけよ。
あんたは、受験生なんだから、それだけに専念しなさい。」
専念しなさいと言われたって、先のことを考えたら、急に不安になってきた。
我が儘通して専門学校へ行くにしても、お袋の言うように大学へ行くにしても、先立つものが必要になる。
仮に、入学金用意できても、この先何年も学費が掛かるし、生活だってしていかなくちゃならない。治療費だって掛かる…。
こんなときに、親父が力になってくれたら…。
俺達にまったく興味ない親父に、この時程、腹が立ったことはなかった。
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