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俺なりに、どうすれば良いか、必死に考えた。
お袋を元気付けて、少しでも治療に専念してもらうには、やはり、受験に全力投球するしかない。
担任も、進路の先生も、俺の悩みを察してくれて、いろいろ相談にのってくれた。
「高見沢の希望と、お母さんの希望をどちらも叶えるには、いくつか方法があるな。一番てっとりばやいのは、美術系の大学か、普通大学のデザイン系の科を受験するかだな。
後、一番気になるのは、金だろうが、母子家庭だし、奨学金で通えると思うぞ。」
そんな風に、言ってもらえるだけで、気持ちが、少しばかり軽くなった。
今の大学を選んだのは、そう言うことを、いろいろ考慮した結果だった。
自分の欲しいものが出来たときや、臨時でお金が必要なことがあったときに、お袋に、負担を掛けないようにと、バイトも、高校の卒業前から始めていた。
バイト先は、通うことになる大学の近くがいいと思って、ちょうど店員募集していたカフェに、飛び込んだ。
事情を説明したら、店長は、二つ返事で採用してくれたんだ。
さて、バイト先に着いた俺は、思いきって店長に、休みをもらえるか、聞いてみた。普段、ほとんどそう言うことを言わない俺が、言ったので、店長はビックリしていた。
「…あのう、明日のバイト、休ませてもらえますか?」
「どうした?お母さんの具合よくないのか?」
「いえ、そう言うんじゃないんです…。」
合コン行くから、休ませてなんて言えないよな…。
少しばかり答えあぐねていると、店長は、訳知り顔で、言ったんだ。
「おっ、理由言えないか。まあ、お前も、大学生だもんな。たぶん、友達から、遊びに誘われたんだろ。
明日休みやる。その代わりに、来週の休みは、なしな。覚悟しとけよ。」
「あ、ありがとうございます!」
俺は、周りの人に、すごく恵まれていると思うんだ。だから、その夜は、いつも以上にバイトに力が入ったのは、いうまでもなかった。
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