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「お聞きしたいことのふたつめは、圭吾のことです。あなたと知り合ってからの圭吾は、どんな風でしたか?
幸せな人生、送れてたんでしょうか?
私は、卒業と同時に、彼と距離を取ってしまったから、再会するまでの彼をまったく知らないんです。
その内、話してあげるって、そう言ってくれてるけど、彼は、話してくれない気がします…。
もし、差し支えなければ、教えてくれませんか、あなたから見た圭吾を。」
彰は、少し考えてから、話始めた。
「高見沢とは、不思議な縁でね。たぶん、穂香さんが、二人を結び付けてくれたんですよ。」
「穂香が?」
「ええ、勿忘草ご存知ですか?」
「はい。…もしかして、穂香の誕生花となにか関係あるんですか?」
「ええ、まあ、少しね。…その頃の俺は、出版社で働いていたんです。原稿お願いしてる先生から、勿忘草を探してこいって言われてね、たまたま覗いた花屋でね、最後の一鉢に、二人とも、手を伸ばしてたんですよ。」
「だから、ファーストコンタクトは、花屋さんって、圭吾、言ったのか。」
祥子は、なにか納得したらしく、小さく頷きながら、そう言った。
「高見沢って、優しい男だと、あなたは、思いませんか?
初めて会ったときもね、優しいあいつらしくてね。
ひとつしかない鉢植えを、譲り合いっこしてたんですよ。
そしたら、パッと、鉢植えを手にして、レジで金払って、俺に差し出すんです。
これがなくちゃ、君が困るだろう。自分が買ったんだから、誰にやっても、文句ないはずだってね。
おかげで、ちゃんと仕事はすますことが出来ました。お礼に、酒をご馳走して、それからの付き合いです。」
「そんなことが、あったんですか…本当に、彼らしいな。」
祥子は、なにか思い出したらしくて、クスッと笑っていた。
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