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固まる俺に、彼女は、怪訝な顔をした。
「あの…私なにか、気に障ることでも…。」
「あっ、いや、そんなんじゃなくて…。えっと…その…単に、君に見とれてたっていうか…。君…可愛いなって…思ったから…。」
俺は、ちょとばかり、しどろもどろになりながら、照れくさそうに、言ったんだ。そしたら、今度は、彼女が固まっていた。
「あ、あの…冗談で,そう言うこと言わないでください…。」
「冗談でなんか、言えないよ…、ましてや、初対面の女の子に向かって…。」
顔が火照っているのが、自分でもわかるくらいだった。
「私、あなたと会うのは、2度目です。…覚えてないんですね。そうですよね。覚えてなくて当然です。」
「ちょ、ちょっと待って!俺、君に、前に会ってるの?どこで?」
以外な展開に、理解と思考と口から紡がれる言葉が、なかなか、ピタリとはまらない。まだ少しばかり、ふらつく頭を、フル回転させているが、思い出さない。
「去年の秋、桜田門の近くで…。」
去年の秋…。
一生懸命に記憶の頁を手繰る。不意に、思い出す。
「もしかして、あの時の迷子さん?」
「はい、あの時の迷子です。」
照れくさそうに、笑って言う彼女は、あの時よりも、大人びて見えていたし、雰囲気が違っていて、わからなかった。
『“偶然”は、何度も続くと“必然”になる。』
そんな言葉を言ったのは、誰だったろうか。
たまたま街で出会った女の子に、また、出会うって…。
俺は、この”偶然”を、”必然“に、もしかして、変えていくのだろうか?
俺は、再会した女の子を前に、どういう態度をとれば良いのか、考えあぐねていた。
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