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マイクを、彩華ちゃんから受け取って、俺は、みんなに話始めた。
「個人的なことで、みなさんを困惑させてしまって申し訳ありません。俺は、どうしても、彼にお礼を言いたかったんです。
今、彩華ちゃんが言ったように、この勿忘草を切っ掛けに、二人は、出会いました。
その当時の俺は、小さな殻の中に閉じ籠って、外を見ていなかった。そんな俺に、世界はこんなにも広くて、可能性に満ちているんだと、気付かせてくれてのは、他ならぬ速水でした。
今、みなさんに認めていただける仕事をする切っ掛けも、彼が、与えてくれたと言っても過言ではないのです。
穂香のことにしてもそうです。俺は、彼女の死を頭では、十分、理解して、納得しているつもりだった。彼女の分も、生きなくちゃ、幸せをつかまなくちゃと、必死でした。でも…心の奥底の気持ちは、真逆でした。
会えないのなら、会えるように、この命を絶てばいいのだと、本気で思うほど、追い詰められていたのです。
そんな俺を、すべて認めて、辛いときは、辛いと言って良いのだと、教えてくれたのは、彼です。いつでも、頼って良いと言ってくれる懐の深い男です。
俺が、今もこうやって、笑っていられるのは、彼のおかげなんです。」
俺は、みんなに、にこりと笑ってそう締めくくった。
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