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ふと、エイミは左の棚を眺めました。
そこには、エイミのお気に入りの小説――探偵シャーロック・ホームズシリーズが置いてあります。
エイミはこの小説が大好きでした。
この小説を読んでるときだけエイミは、退屈な日常を忘れられました。
巻き起こる事件、現れる容疑者、迷宮入りかと思われたその先に現れる我らがヒーロー名探偵ホームズ。
この非日常こそ、エイミが臨んでるものなのだ、と――
かぽーん、という奇妙な音がしました。
それにエイミは、画面を見上げます。
そこにはエイミが臨む”非日常”そのものである、大きな石や見なれない樹や不思議な模様を描く砂で彩られた庭園。
エイミは決めました。
部屋を出よう。
「――うん」
立ち上がり、ゆっくりと部屋を横切っていきます。
父親にあてがわれたおっきなぬいぐるみやお人形たちは、置いていきます。
部屋の外には、いいことばかりではないでしょう。
でもそれも、ホームズに立ちはだかる困難だと思えばへっちゃらです。
通り道も楽しむのが、ヒーローなのです。
「うん、行こう」
がちゃり、とドアを開けます。
そしてエイミは”非日常”への第一歩を、踏み出しました。
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