第1章

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私は、カナコ。小学2年生。 ここだけの話。私の家には悪魔がいる。 いるというか、ふらりとやってきて、ふらりと帰える。 悪魔は正体がバレないように、人間に姿を変えている。 だから、私の母親は、その悪魔に気づかずに、家に上げている。 「こんにちは、カナコちゃん」 悪魔は笑顔で、私に声をかけて、 「ケーキ買ってきたから、一緒に食べようよ」 手招きをして、隣りの部屋に逃げ込んだ私を誘ってる。 きっとあのケーキを食べたら、私は悪魔の手下になるんだ。 「いらない」 私は顔を背けて、学校の宿題をしようとする振りをみせる。 彼女の正体を知ってるのは、私以外には父親だけだ。 父親が、『彼女は悪魔だな』と言っているのを聞いた。 でも、母親は笑って『そんなことないわ』と一蹴してた。 また悪魔はやってきた。 いつもの如く、お菓子食べようと誘ってきたが、聞こえない振りでその場を済ませた。 でも、この日は悪魔は引き下がらなかった。 「カナコちゃん、これあげる」 私の視界に、一枚の金の紙が置かれた。 「えっ・・・・・・」 「これにお願いことを書いてごらん」 「書いたらどうなるの?」 「その願いは叶います」 あぁ、ついに悪魔は痺れを切らして、直接私と契約を交わしにきたのだ。 悪魔は神様ではない。だから、願いを叶える代わりに、何かを差し出さなくてはならない。 「なんでも叶えるの?」 「どうかしら。カナコちゃんのお願いこと教えてくれる?」 どうしよう、どうしよう。悪魔は目を爛々と輝かせ私に迫ってくる。 そうだ、今の私には到底実現しない願い事を言おう。
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