第1章

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「ナオヤくんと遊びたい」  彼は隣のクラスの男の子で、実は私は彼のことが気になっている。  共通の友達もいなくて、話しかける勇気がないのが今の現状だった。 「よし!それを書いちゃおう♪」 「・・・・・・書いたら契約成立するの?」 悪魔から何の変哲もないペンを渡され、私は自然と受け取ってしまい、内心パニックを起こした。もう逃げられない。お母さん助けて。 「成立? 書いたら私が持っていってあげるわ」 どこに持っていくの? もしかして悪魔の親分の所に。 背中に冷や汗が流れている。これを書いたら、私は何かを悪魔に奪われる。 私は覚悟して、自分の願い事を金色の紙に書いた。 それを受け取ると、悪魔はニコっと笑って、 「晴れたら叶うよ」 と一言だけ残して、私の部屋から出て行った。 お願い晴れないで。私は願った。 悪魔は相変わらず、私の家に上がりこむ。 先日書いた私の願い事のことは触れずに、いつも通りの日常だった。 明日から夏休みに突入する。 今日で一学期が終わる。ナオヤくんとは暫く会えなくなる。 つらいな。早く二学期が始まったらいいなと思った。 学校の校門をくぐる手前に、聞き慣れない声が私を呼んだ。 「カナコちゃん!」 振り返ると、なんと隣りのクラスのナオヤ君が私のところまで走ってきた。 胸がドキドキした。 どうして?どうして? 息を切らし、ナオヤくんは私に追いついた。 顔をあげたナオヤくんをこんな至近距離で向かい合うなんて。 「カナコちゃん、一緒に遊ぼうよ」 「えっ・・・・・・あ!」 忘れていたことを思い出した。あの悪魔に渡した金色の紙に書いた願い事が叶った瞬間だった。 「どうして私と遊びたいの?」 「カナコちゃんの苗字は木下だよね?」 「うんそうだよ」 「やっぱりそうだ。デパートでみたんだ七夕の短冊を」 「短冊?」 「うん。僕と遊びたいって書いてたよ。金色の短冊だったからすごく目立ってたよ。木下カナコって書いていたから、ずっと気になってたんだ。だから明日一緒に遊ぼうよ」 「うん!」  二人で待ち合わせ場所と時間を決めて、ナオヤくんは微笑み、お互い手を振って別れた。  願いが叶ってしまった。  正直、嘘のように嬉しい。  でも、私は悪魔に何かを差し出さなくてはならない。  お母さんに頼んで、ケーキをあげるのはどうだろう。  あの悪魔は甘いものが好きだから。
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