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「ナオヤくんと遊びたい」
彼は隣のクラスの男の子で、実は私は彼のことが気になっている。
共通の友達もいなくて、話しかける勇気がないのが今の現状だった。
「よし!それを書いちゃおう♪」
「・・・・・・書いたら契約成立するの?」
悪魔から何の変哲もないペンを渡され、私は自然と受け取ってしまい、内心パニックを起こした。もう逃げられない。お母さん助けて。
「成立? 書いたら私が持っていってあげるわ」
どこに持っていくの? もしかして悪魔の親分の所に。
背中に冷や汗が流れている。これを書いたら、私は何かを悪魔に奪われる。
私は覚悟して、自分の願い事を金色の紙に書いた。
それを受け取ると、悪魔はニコっと笑って、
「晴れたら叶うよ」
と一言だけ残して、私の部屋から出て行った。
お願い晴れないで。私は願った。
悪魔は相変わらず、私の家に上がりこむ。
先日書いた私の願い事のことは触れずに、いつも通りの日常だった。
明日から夏休みに突入する。
今日で一学期が終わる。ナオヤくんとは暫く会えなくなる。
つらいな。早く二学期が始まったらいいなと思った。
学校の校門をくぐる手前に、聞き慣れない声が私を呼んだ。
「カナコちゃん!」
振り返ると、なんと隣りのクラスのナオヤ君が私のところまで走ってきた。
胸がドキドキした。
どうして?どうして?
息を切らし、ナオヤくんは私に追いついた。
顔をあげたナオヤくんをこんな至近距離で向かい合うなんて。
「カナコちゃん、一緒に遊ぼうよ」
「えっ・・・・・・あ!」
忘れていたことを思い出した。あの悪魔に渡した金色の紙に書いた願い事が叶った瞬間だった。
「どうして私と遊びたいの?」
「カナコちゃんの苗字は木下だよね?」
「うんそうだよ」
「やっぱりそうだ。デパートでみたんだ七夕の短冊を」
「短冊?」
「うん。僕と遊びたいって書いてたよ。金色の短冊だったからすごく目立ってたよ。木下カナコって書いていたから、ずっと気になってたんだ。だから明日一緒に遊ぼうよ」
「うん!」
二人で待ち合わせ場所と時間を決めて、ナオヤくんは微笑み、お互い手を振って別れた。
願いが叶ってしまった。
正直、嘘のように嬉しい。
でも、私は悪魔に何かを差し出さなくてはならない。
お母さんに頼んで、ケーキをあげるのはどうだろう。
あの悪魔は甘いものが好きだから。
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