第1章

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なんと母に言っていいか分からず、電車の時刻と駅まで迎えに来て欲しいと頼んで携帯を切った。 俺に亡くなった事、知らせたかったって?逆に怖えーよ。 でも一人でひっそり亡くなった、たった一人の叔父の事を思うと、不憫で泣けてきた。 母の言う様に最期に俺に知らせたかったのかな… もう一度、留守電を再生させ耳にあてる。 「元気してるか?近々会おうな!」 初めて聞いた時は、寝起きで暑さもあって、ぼんやり聞いた留守電だったが、聞き直してみると、ギターのメロディと重なって、微かに叔父さんの声が聞こえる。まだ、何か話しているのだ。 だが、よく聞こえない。 また留守電を再生させ耳にあて、今度は集中した。 ギターのメロディと重なって聞こえて来たのは… 「く…る…し…い」という言葉だった。 たった今耳元で囁かれた様に生々しくて、怖くなって携帯を投げた。 家に一人でいるのが、怖くなって少し電車の時刻には早いが、出ることにした。 数日分の着替えの入ったバックを片手に部屋のドアを開ける。 結局、喪服は見つからなかった。
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