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「ゴミ屋敷って、みぃちゃん。また、そんな大仰に話を広げて……」
まぁ、いつもの事ながら、
どうやら今度も、この人のスーパー暴走妄想が始まったらしい。
だが、もちろん俺は、そんなものに付き合う気は更々ない。
俺は、一瞬止まった踵を再び返しかけた。
ところが、
「なにが、大仰よ!
私だけじゃなくて、もう十分みんなの不安と噂になってるわよ。
あの家に、次々粗大ごみが持ち込まれているらしいって。
だいたいほら、この前の粗大ごみの日。
その前の晩に、ウチの町内でも、いくつか持っていかれたっていうんだし」
不覚にも、この「この前の粗大ごみの日」と「その前の晩」という言葉が
俺の記憶の片隅で何かを引っ掛けかけた。
だが、それに続いてカランコロンと店の扉に付けられたベルが軽やかに鳴る。
そして、
「なんだ満知代くんは、またここで油売ってるのか」
「あら、先生」
女性二人が声を重ねたその主の言葉に、俺は、ハッと腕時計に目を落とした。
ヤバい。ダッシュで行かないと、バイトに遅刻する。
俺は、足音がするのも構わず、慌ててその場を立ち去った。
そしてその夜、俺は、また新たに見知らぬ真夜中の「灯り」に
出会ったのだった。
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