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クキとの闘いから一週間ほど経ったある日の放課後、晶子は朋美に誘われて商店街の喫茶店に入った。通って来た商店街もそうだったが、喫茶店の中もクリスマスの雰囲気一色だった。ホワイトクリスマスの音楽が流れる窓側の席に、晶子と朋美は座った。窓の外には、クリスマス商戦でにぎあう人々が見えた。
「クリスマスイブまでもう一週間チョットよ。準備できてるの、晶子?」
注文してやって来たコーヒーをすすりながら、朋美が訊いた。
「大丈夫よ。バッチリ。オカミサンに教えてもらった手編みの手袋がもう少しで完成するの。まだ時間があるから、マフラーも作っちゃおうかな」
テーブルを挟んで朋美の正面に座る、晶子は機嫌が良かった。
「手編みか。晶子は意外と器用なのね。それなら、マフラーじゃなくて、お揃いの手袋にしたら、良いじゃない」
「えーっつ。お揃いはやり過ぎよ。そうでなくても、手編みの手袋って貰った男性は引くって、聞いたことがあるわ」
「ふーん。そういう事もあるのね」
「ただ、問題はまだ先生とのアポイントが取れてないことなの」
「それは大丈夫でしょう。桜田先生は晶子の言いなりみたいだから」
そう言って、朋美は笑った。
「そうだと良いけど。で、もしアポイント取れたら、朋美も一緒に行ってくれるでしょ?」
だが、晶子の問いに朋美は即答しなかった。晶子は自分のコーヒーを一口飲んで待った。
「わたし、やっぱり遠慮しとくわ。卒業プロムもあるし、翔の機嫌を取っておかないと」
「そうか。キープクンか」
晶子は期待がはずれて、少し気落ちした。
「だって、クリスマスが終わったら、冬休みでしょう。そして、受験。なんか、卒業式まで慌ただしくなりそうだもの」
「だから、キープクンね。新しい彼氏見つける暇ないもんね。それで、朋美は受験どうするの?」
「わたしは将来、就職とかあまり興味ないけどね。でも最近、母が大学は出ときなさいってうるさく電話して来るの。だから、楽勝そうなところを幾つか受けてみようと思ってるわ。晶子はどうするの?」
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