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しばらく沙耶の観察をしながら先生の声を聞いていた。
「ほれ、お2人さん。お待ちどぉ?さんっ。」
と、おっさん臭い声をかけられた。
「待ちくたびれましたぁ~。」
と、これまたキャラが変わってしまった沙耶さん。
もう、その頬の色、こっちか恥ずかしいくらいですが…。
見ないフリしとこ。
先生は気にも留めず、私が差し出した問題を見て、呟いた。
「この問題、分からないヤツ多いな。」
先生自ら持参した要らなくなったコピー用紙を裏返しにして纏めた束に、ボールペンでサクサクと問題を解いて行く。
ほほーぉ…と思わず声が零れてしまった。
「おばあちゃんかっ!」
ちょっと笑ったような顔で先生が言った。
「ありがとうございます!!」
私がお礼を言って沙耶を見ると、帰り始めたクラスメイト達に手を振っていた。
「沙耶、この紙いる?」
眼がキラーンと光り、くれっ!と訴えている。
「じゃ、ノートに写すし、もうちょっと待ってて!」
私は、テキストと問題を見比べながら先生のメモを書き写す。
「わかりやすぅ…。」
書き写しながら、思わず呟いてしまった。
「そっか、なら良かった。」
先生は、そう言ってちょっと笑った。
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