第1章

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長袖シャツでは肌に張り付いてしまいそうな夏休み前。 ちょっと肌寒い曇りの日だから、長袖を着て来た私は、数学の教科書にため息を零していた。 「なに、それぐらい解こうよ…。文系でも、数学はいるし。」 沙耶は、2年のクラス替えで一緒になり、共通の友人が居たから元々顔も知っていたし、話をしたこともあった。 だから、お弁当を食べる時も、難しい問題が解けない時も、サバサバと声をかけて来る。 「うーん、そんなの分かってるけどさぁ…。公式を必要なところを見付けて使う作業が苦手なんだよねぇ…。それに、うちの数学の担当、死神でしょぉ…。」 死神。 あまりに頬がコケており、目付きも鋭く、濃いクマのある青白い顔色。 理想的過ぎる死神顏の中橋先生。 顏の印象から来る情報が多過ぎて、授業がサッパリ脳に届かない。 「だからこそ、死神に目付けられないためにも、この位サラッとやってかないと、補習とかマンツーマンコースだよ?」 吐き気すらするマンツーマン。 密室に2人きりとか、精気吸い取られるって、みんな騒いでいる。
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