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「あのね、先生に向かって暇か?は、失礼だしね。で?」
葉山先生は、明らかに何か作業をする為に机に大きな紙を広げていた。
なのに、手を止め沙耶の話に向き合ってくれている。
兄貴!と男子にも人気なのはこう言うとこなんだろうか。
「あの、私とこの友達が、数学で分からないとこがあるんです。教えて貰えませんか?」
沙耶は、先生しか目に入ってないらしく、作業中の机には気付けていない。
このままでは、迷惑をかけてしまう。
焦った私は、沙耶の背中をツンツンとつついた。
先生に夢中のさやは、気付かない。
「んー、ちょっと散らかってるし、俺のクラスで待っててくれるか?直ぐ行くから。」
断らないんだ。
でも、学校の先生は、とても忙しいってテレビでやっていた特集で見た事がある。
この大きな紙も、多分、明日の授業の準備だ。
他の先生だって、今日のまとめや明日の準備をしている。
放課後に、生徒に話かけられるのは迷惑なんじゃないだろうか?
私は、沙耶の腕を揺する。
やっと先生に釘付けになっていた彼女の意識がこちらに向いた。
「何?佐和。」
「先生、作業の途中みたいだし、帰ろっ。ね?」
コソっと小さな声で言う。
出来たら、先生には聞こえないで居て欲しい。
気を遣ったとか、遠慮したとか思われるのが苦手。
でも、私の声は小さくても、目線でバレてたみたい。
「んー、じゃ、15分ほど教室で待てる?これ、片付けてくから。」
「はーい。じゃ、先生のクラスで待ってます!」
そう言うと、沙耶はまた先生を見上げ、ニッコリと笑った。
花でも背負ってるかのように見えるのは、私だけなんだろうか?
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