第1章

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職員室を出て教室に向かう時、髪も肌も歩き方も声色も、沙耶はいつもの沙耶だった。 「佐和ぁ~、死神が職員室に居なくて良かったねー!」 うん、そうだね~って言いながら、沙耶の変化に私は、どう言う言葉を当てはめればいいのか分からない。 ただ普通にニッコリ笑って、他の先生をあだ名で呼んでいる。 なのにてるちゃんには、先生って言ってた。 確かに、死神に向かって 『死神!』 って言うのは、あの世行きだ。 きっと、睨まれただけで魂が肉体を逃げ出す。 でも、てるちゃんは、みんなが『てるちゃんっ!』って呼んでいる気がする。 いつもの沙耶なら…てるちゃんって呼んでもおかしくはない。 職員室だったし? でも、うちの高校は、その辺がゆるい。 学力的には、県内中堅。 トップにもなれず、厳しくも躾けられず、ゆるいゆるい。 だから、職員室だろうと授業中だろうと呼び名のある先生は、ちゃん付けだったり、呼び捨てだったりする。 沙耶も、体育の山田修先生は『山ムー!』と言ってるし。 これも、乙女ゴコロというやつなのか? 好きな人の名前は、影では呼べても、直接呼べないとか? 数学だけで手一杯なのに、また新たな問題が私の頭を?だらけにした。
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