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僕は廊下を歩く。
特別棟と一般棟、双方を繋ぐ廊下がないことは不便で仕方ない。
そんなこともあってか、自分の棟じゃない人との交流がなかなか無い。
この特別棟は主に特進クラスの人達が使うため、僕が浮いてしまっていた。
それにしても本当に先生は人使いが荒い。
なんで僕が動かなきゃいけないんだろう。
まだ春も中頃だというのに、汗が滲むのを感じた。
まったくついていない日というのもあるらしく、今日がそれなんだろうなぁ。
特進クラスの人達にジロジロ見られつつも気にしないフリをして昇降口に向かう。
上履きを引き摺るように歩きながら窓の外を眺めていると一般棟と特別棟の影に人がいる。
「へぇ、なんだか依頼きそうだね、今日はついてる日だったのかもしれない」
告白かな。
二人の立ち位置から考えるに─────。
呼び出したのは男のほうか、やるねぇ。
しかも学年では名高い鴇さんが相手か、ふーん。
それにしては、些かムードに欠ける場所選びなんじゃないのかな。
「あ、やっぱりダメか」
鴇さんだけが早々に去っていった。
まぁ、僕の知ったことじゃないからどうでもいいけれど、今はね。
さて、僕も早々にこんなところから去りたいもんだ、ジロジロ見られて敵わない。
特別棟から抜けたところで、これから帰るらしいクラスメイトに見つかる。いや隠れてはないから遭遇とでも言っておこうか。
「なぁ、紺青─こんじょう─。お前なんか良いことあったのか?」
「まぁね。運が良いだけ」
それだけ言って一般棟のほうへ上履きを引き摺った。
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