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交差点のアスファルトにこもった熱と停車中の自動車の排気ガスの作り出す気持ちの悪い暑さは、ただでさえ暑さに弱い良夫の気持ちを不快にさせた。
良夫の隣には煙草を吸いながら信号待ちをしている五十代のサラリーマンが自分の足下にタンを吐き出し、その上に吸殻を落としていた。
「汚ねえ」
良夫はボソッと呟きながらサラリーマンを睨み付けた。
と、その瞬間、良夫は肺の辺りに何かむず痒い物を感じ、咄嗟に口から吐き出した物を自分の両手に受け止めた。
「これは?」
手のひらを見ると、黒色の液体と黄色の縮れた麺が乗っている。
口の中に黒色の液体が少し残っている。
「冷やし中華だ!」
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