第1章

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(驚いた。何やらわからぬが、書物が落ちておる)  源之助は午後からの学問所に行かず、寂れた神社の境内でうとうと微睡みを甘受していた。右半身へヒヤリと殺気に似た風を感じ、目を開く。  同時に空から一冊の書物が降ってきた。 (なんだ?妙な・・・・・・どんな筆で書けばこのような形になるのだ?史、本・・・・・・日?何やらわからぬものだな)  元々の好奇心から源之助は一枚ページを開く。 (なんだ。これは?)  大きく縦長な囲みがいびつに形どられ、上や下など三つそれより小さな囲みがならんでいる。その上に妙な線が引かれ、小さな文字が記されている。線のなかにかかれたものは、それぞれ国の名前だ。  そのしたには整然とした四角な囲みの中に、より小さな文字が刻まれていた。 「な?これは?国、羽・・・・・・出・・・・・・む?出羽国・・・・・・か?」  この書物は以前学問書で先生に隠れて見せてもらったオランダの書物と同じ書き方らしい。  それに気づくと、半分近くは国の名前がかかれていると分かった。しかしその横に書かれているものはなんだろうか。 「なんじゃ?山形・・・・・・県?県とはなんだ?」  頭を捻りあるいても答えは出ず、やがて鈍い痛みを感じた。あくび一つ漏らして、パラパラと目繰る。  ある頁の文字が目についた。 「戸、江・・・・・・江戸時代?・・・・・・将軍・・・・・・」  さらに頁をめくる。ある年号に手が止まり、暫く瞳があちらこちら忙しなく動く。  いままでの頁では文も何やらことなり、訳のわからぬ言葉も多く、さらさら読み飛ばしていた。ただそうかと思えば、京や儒学、仏・・・・・・知っているものもある。  不思議な絵図や目の前にあるように見える仏にも目が奪われたものだ。  西日の光が強く辺りを照らす。ようやくこの頁の書かれている内容を理解したとき、源之助は書物を手から落とした。
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