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秋晴れ。通学路を歩く日課。入学当初からの決められた儀式。今年で三年目。いつもと変わらぬ朝に風は心地よい。毎日歩いているこの道には高山通と名前がついている。
花心が急ぐ坂道の突き当たりには遮断機がある。
花心は、体力がないことを理由に自転車は使わない。
先に自転車で駈けて行くクラスメイトの葉山は今日もヘッドフォンを耳につけていた。葉山はいつだって花心より先に行動している。今朝もバスケ部の朝練なのだ。葉山より先に出て、あとから紀伊國学園に辿り着く。花心の日課は三年間変わることはなかった。
「おはよ! 花心。また、やつに見とれていたな?」
「おはよ。そんなことないよ?」
「嘘つけ。視線が葉山を追いかけていたよ?」
「茶化さないでよ。優ったら!」
遮断機の手前で岡本優が花心のことをからかった。花心は明るく返して紀伊國学園への道を急ぐ。既に葉山の自転車は遥か向こうにあった。
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