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ーーーーーそれでも俺は、闇夜に光る星に恋い焦がれる・・・。
「んっ・・・」
触れ合うだけのキスをして、彼は名残惜しそうに親指で俺の唇をなぞった。
その目は、まだ熱を帯びている。
「奈都(なつ)、もう終わり。…学校でこういうことしない約束だろ。」
振り払うように顔をそらし、優しく抱きしめる腕から、するりと逃れ出る。
少し乱れた制服を直しつつ、校舎へと足を向けた。
「ねぇ、瑞希。少しは俺の体温分けてあげられた?」
「…まぁね。」
「よかった!」
俺よりも20センチも背が高い男が、子どものように無邪気に、にっこりと笑う。
なんだか、不思議な光景だ。
「授業始まるから、行くよ。」
「あ、待って瑞希!」
いつからだっただろう。
保育園の時からの幼馴染だった奈都とこんな関係になったのは。
「ねぇ、瑞希。放課後…俺ん家寄るでしょ?」
「・・・」
「もう俺限界。一か月も瑞希に触ってない。」
「今キスしたじゃん。」
「だめ。もっとキスしたいし、もっとつながりたい。」
奈都とは、付き合ってるわけじゃない。
俺は生まれつき人より体温が低いらしく、風邪をひきやすかったり
貧血気味だったりと、とにかく体調を崩すことが多い。
だから、セックスは、俺にとって体温を調節するための行為でしかない。
「ね、瑞希…」
「…わかったから。」
「やった!」
「…俺、ちょっと保健室寄っていくから。」
「具合悪いの?」
「薬飲みに行くだけ。」
「わかった。先行ってるね。」
それを知っていて、それでも奈都はその体温調節役を買って出た。
バカみたいだと思うけれど、結局俺も、それに甘えているのかもしれない。
「失礼します。」
「おや。」
保健室の扉を開けると、教卓に座る先生がこちらを向いた。
「先生…少し、休ませてください。」
「えぇ、どうぞ。今ちょうど誰もいませんから、どこでも…」
「……”ココ”がいいです。」
言葉を遮り、ふらふらと腰かける先生の膝に、片脚をかけた。
先生の紺色のネクタイを少し引き寄せて、余裕げに笑う彼を見下ろしながら。
「………………困りましたねぇ。」
先ほどまでの作られた笑顔を捨て
クスッと、意地悪く、愉快そうに先生が笑い、俺の顎を優しくとらえる。
「”ココ”は高いですよ・・・?」
その言葉とともにゆっくりと、唇が重なった。
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