第1章

3/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 50ccバイクを走らせながら、考えた。20巻以上もある漫画を積んだままインスタント写真を撮るのも不安だったので、先に売りに行こうと。  カウンターで全巻揃っているそれを預け、店内を徘徊する。暫らくの後、店員に呼ばれ、日焼けが酷いと言う理由で買い取れないとのことだった。店員は「お持ち帰りになりますか?」と聞いてきた。正直結構な重さのそれを持ち帰るのも手間だとも思ったが、邪魔で売る訳ではないので、持ち帰ることにした。空腹と脱力で別に腹も立たない。  バイクを走らせながら、あのまま置いて行くと本は破棄されるのだろうか?多分、売れている漫画だし、市場には多数出回っているだろう。でも内容は変わらないのに無価値だと言われる理不尽さを受け容れた。自分にアゲンストなことは無心で受け入れることが、いつの間にか身に付いた。  何も成果のないまま家に戻るのかとも思いながら、交差点で停止中に、証明写真の看板が目に入った。本の買取店へ行く途中、目ぼしいコンビニエンスストアを確認しながら、バイクを走らせていたのだが、店舗前にはインスタント写真の販売機がなかった。半ば諦めての帰り道だったので、結局本は満載のまま写真を撮った。  近くのコンビニエンスストアにも寄って、煙草を2箱と100円のチョコチップパンを2袋買って帰った。  今日中に履歴書を仕上げて、明日午前中に、日払いのあるアルバイトに電話をしよう。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!