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豪商・美津田屋宗右衛門が、長崎にやってきたオランダ人の商人から手に入れた品々を持ってくるのを、藩主・大西直之はいつも心待ちにしていた。
鎖国状態であるこの時代、武士も町人も遠い西洋の文化に対するあこがれをもち、それは若い藩主である大西直之も同じであった。
贅沢な物をもっていることで幕府に目をつけられ、お取りつぶしにされるのを恐れる直之は、西洋の品々を買うことをおおっぴらにはせず、家来に命じてこっそり取り寄せてもらっていた。
城にやってきた美津田屋宗右衛門は、直之の前でこうべをたれた。
「先頃、オランダ人より手に入れた品でございます」
「おお、待ち遠しかったぞ」
一段上がった畳の上で、直之は相好を崩した。
「さっそく見せるがよい」
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