9人が本棚に入れています
本棚に追加
黒埼が礼緒菜の頭を軽くポンポン叩く。
紫貴がパスワードを入力しながら礼緒菜に問いかける。
「礼緒菜も見る?」
目頭を押さえながら礼緒菜が答える。
「中身は知ってるけど…見る」
「……そっちに移動しようか?」
紫貴が礼緒菜を気遣うように声を掛ける。
「私が行く……」
礼緒菜が紫貴の後ろに立ち、屈むようにパソコンを見つめる。
「いくよ……」
紫貴がそう言って、ぽちっとエンターキーを押した。
生前礼司が調べていたもの……それは、ある検事の、考えてみるとかなり不審な『自殺』の案件だった。
『二年前、ひとりの男が死んだ。名前は、横山進(よこやま すすむ)。職業、検察官。死因は転落死。
検察庁の屋上から落ちたのだ。現場には、彼の遺書も、遺品も何も残っていなかった……。』
この件に関して疑問を持ったので調べ、あることに気づき、内部告発しようと、まとめていた資料だったのだ。
生前の礼司と礼緒菜が調べていたものだと、言っていた案件。礼司がまとめ、彼の死後も礼緒菜が個人的に調べていたもの。
礼司がまとめたものを礼緒菜がいじらず、調べたものを追加していただけだとすると。
礼司が『事故死』したのが4年前。更に2年前の案件なので、今から6年前の案件ということになる。
紫貴と黒埼がモニターを無言で読んでいく。
「……どう思う?」
「事故じゃなかったら、口封じだな」
黒埼が淡々と言う。
「これは……葛城さんが?」
紫貴が礼緒菜に問いかける。
「……そう。
だから、葛城も口封じされたのだと思う…あの日、晴海埠頭で、無人の大型トラックに撥ねられて……」
礼緒菜が、意外な事故の真相を口にした。
「うわあ……」
「無人?」
「うん…
だから、確信したのよ」
「良く知ってるな。事故で片付けられた案件だぞ?」
黒埼が不審そうな声を出す。
「何でも知ってるわ。
だって、その場に居たんだもの」「……っ」
意外な言葉に、黒埼は反論できない。
「まさか……旦那?」
「……即死だったわ。
私は許さない。葛城と、お腹の赤ちゃんを奪った犯人を許さない!」
紫貴の問いかけに、礼緒菜の激昂が応える。
「追い詰めてやるんだから!」
激昂の末に机をバンバン叩く。
最初のコメントを投稿しよう!