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黒埼はその翌日、的場氏の案件の件で、朝比奈法律事務所に行っていた。
手には、紫貴から聞いたのか、某有名店のプリンの入った箱を携(たずさ)えて。
その日の内に黒埼は、間接的にだが、礼緒菜に翌日の事情聴取のアポイントを取り付けた。
その時の事を紫貴にメールでこんな感想を送った。礼緒菜と紫貴が一緒にいる事を知らずに--。
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黒埼
無題
───────
朝比奈法律事務所へ敵情視察。
美女3人発見(笑)
追伸
氷の女よりも、
月の女神
っていうイメージだった。
本人には、絶対言わないけど(o^-^o)
要
───────
それを見せられた礼緒菜はびっくりしたようにこう言った。
「うちの事務所には、現状3人しか女性はいない…
え?私も含まれてる?
月の女神かぁ…刑部(おさかべ)さんが聞いたら、卒倒するかも」
「含まれてなかったら、わざわざ名前を確認しないよ」
紫貴がクスクス笑いながら言うのに、礼緒菜がハッとした顔をする。
「もしかして、黒埼さんって、紫貴と私のこと、勘付いてる?」
「可能性あるな。隠してるつもりはさらさらないから」
きっぱりと紫貴が言い切ると、意地悪く笑いながら礼緒菜に訊く。
「それとも、暫く距離置く?」
「やだ」
こちらもきっぱりと礼緒菜が言う。そして、嫌なものを思い出したような顔をした。
「黒埼さん、私を見て、一瞬ニッコリ笑ったの。心臓止まるかと思った」
「卒倒って………聞きなれてないから?」
ふと思い出したように紫貴が礼緒菜を見る。礼緒菜がにっこりと笑う。
「刑部さんは、常に"鉄の女"って代名詞だからね。絶対、倒れるよ」
「………うわぁ、言い切ったよ」
「だって、刑部さんの口癖は、"私は法律と結婚したの"だよ?」
朝比奈法律事務所には、事務員以外の弁護士(見習い含む)に女性は3人しかいない。性格も雰囲気も全員違っている。
通称『鉄の女』こと刑部──刑部、真実(まみ)──は、セミショートのボブで、クールな美人だ。
真理(まり)ちゃんこと刑部真理は、ストレートのロングヘアで、可愛い系の司法修習生。
礼緒菜──朝比奈礼緒菜は、ふわふわの天然パーマのロングヘアで、明るい系。
朝比奈法律事務所は、この3人と男性数人で構成されているのだ。
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