Prologue 01

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 この春に大阪から千葉に越してきた、 私こと真角泪。  母子家庭ならぬ父子家庭である私の家族は、 朝から仕事や学校だと言って慌ただしくしていた。 「泪。 お弁当は持ったかい?」  玄関でローファーを穿くのに夢中になっていた私に、 父・真角英孝が心配そうに駆け付けた。 「あ、 やば!」  ドジなことが取り柄である私にとって、 お弁当を忘れないことなんてありえない。 ……なんて自慢してみたところで、 自慢にはならないのが落ちだった。 「あー! 靴穿いちゃったよー!」  とか言って靴のまま廊下を走ろうとする私に、 父が 「ちょっと! 手間だけど、 一度靴脱いでから廊下に上がりなさい」と激励する。
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