Prologue 01

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「何辛気臭そうな顔してんだよ」  二人揃って玄関から外に出ようとした矢先、 兄のデコピンが見事に私の眉間にクリーンヒットした。 「痛ーい!」  あまりの痛さに両手で額を抱える。 「何すんのよ、 この童貞甲斐性無し!」と叫びながら、 右足に渾身の力を込めて兄の背中目掛け突き飛ばした。  そのキックが見事に兄の脇腹にめり込み、 兄は 「ぐはっ!?」っと言って扉の向こうの階段を転げ落ちた。 「じゃあ二人とも、 気をつけてね」  父は玄関から身を乗り出してそういう。 そして私が 「行ってきまーす!」と宣言すると、 玄関の扉が閉じる。  私はそのまま階段を駆け降り、 自転車を準備しているはずの兄を探す。 しかし、 その影はどこにも見当たらない。
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