6人が本棚に入れています
本棚に追加
「何辛気臭そうな顔してんだよ」
二人揃って玄関から外に出ようとした矢先、
兄のデコピンが見事に私の眉間にクリーンヒットした。
「痛ーい!」
あまりの痛さに両手で額を抱える。
「何すんのよ、
この童貞甲斐性無し!」と叫びながら、
右足に渾身の力を込めて兄の背中目掛け突き飛ばした。
そのキックが見事に兄の脇腹にめり込み、
兄は
「ぐはっ!?」っと言って扉の向こうの階段を転げ落ちた。
「じゃあ二人とも、
気をつけてね」
父は玄関から身を乗り出してそういう。
そして私が
「行ってきまーす!」と宣言すると、
玄関の扉が閉じる。
私はそのまま階段を駆け降り、
自転車を準備しているはずの兄を探す。
しかし、
その影はどこにも見当たらない。
最初のコメントを投稿しよう!