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「神原、表の暖簾下げてきてくれ。それが終わったらチャーシューの仕込みな」
「はいっ」
閉店時間が過ぎ最後の客が帰った所で、店主の熊田さんが疲れた様子で俺に指示を出す。
ここ、熊田さんが店主をしている『くまちゃんラーメン』というラーメン屋。
熊田さんはかなり厳つい顔のおっさんだし『くまちゃん』なんて柄じゃないんだが。
高校を卒業してから、とにかく仕事をして一人で生きていきたいと考えていた俺は、たまたま店頭にバイト募集中の貼り紙をしていたこの店を見つけた。
どんな仕事でもいい、自力で生活出来るようになりたい。
アパートを借りるまではスタッフ控え室の隅に寝かせてもらったり、熊田さんの家に泊めてもらったりした。
最初は帰る家も無く住み込みで働かせてもらえないかと言い出した俺に、熊田さんも警戒していたみたいだが。
アパートを借りられるだけの資金を貯め、三年も勤めた事でチャーシューの仕込みを任せてもらえるくらいにはなった。
真面目に働くって、素晴らしいよな。
暖簾を下げてチャーシューの仕込み。
厨房の掃除を終えると熊田さんが「先に上がっていいぞ」と事務室に使っている小部屋から顔を出した。
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