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「ホントにお前は……妙なのにばっかり好かれるな」
再びケントが溜め息を吐き、俺の腕を掴んで自分の方へと引き寄せる。
「うわっ!」
ガクンと傾いてよろめいた俺の身体を、ケントがしっかりと抱きとめた。
「そんなんだから、お前から目を離せねぇんだ」
「あ……ごめん」
「あんまり俺に妬かせるな」
……妬く? ケントが?
何だか妙にドキドキして抱き締められた体勢で顔だけを上げると、ケントの頬がほんのり赤くなっている。
マジで!?
「そ、そんな、俺が好きなのはケントだし……」
「豆彦より?」
豆彦にまでヤキモチを焼いたのか、そう思ったら何だか凄くケントが愛おしくて。
「豆彦よりも!」
僅かに踵を上げてケントの口唇に自分の口唇をそっと押し付けた。
確かに豆彦や犬達は大好きだけど、ケントは別格だ。
ケントの傍に居られるだけで、こんなにも幸せな気持ちになれる。
俺の幸せは、ここにあったんだ。
この『妖』探偵事務所に。
「ケント、好きだよ」
もう気持ちを押し殺す必要も無い。
込み上げる愛しい気持ちを吐き出せば、ケントも照れたように「俺も」と言ってくれて。
幸福感に浸りながらケントからのキスを受け入れた。
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