第一章

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だからこうして人がいるという事実が大人気なくも嬉しかった。 そう……………… 嬉しかったのに、その音がまさか恐怖の前兆だなんて。 この時の私は知るよしもなかった。 ただ純粋に嬉しくて、音を頼りに音のする方に向かって歩き出した。 綺麗に整えられたコンクリートの道。 見慣れたいつもの道よりも真新しく、工事されたばかりなのだと素人でもわかった。 駅も真新しかったし、もしかしたら開発途中のタウンかも知れない。 そう思えば人があまりいないのも、全て真新しいのも、こうして緑ばかりなのも頷ける。 そう自分に言い聞かせて、私は一本道を歩き出した。 左右は木々に覆われていて、普段触れることのない自然で心も和んだ。 だが今は夜。 なにせん暗いのだ。 不思議と怖くないが、テンションは子供の時の冒険心を擽られてワクワクしてしまっている。
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