第一章

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「────お嬢さん」 不意に人の声がして飛び上がった。 声の主は木々の隙間に伺えたが、何故そこにいるのか理解できない。 暗がりでなんとか影だけは伺えるが、顔は見れない。 声から老婆だと理解するが、僅かに引っかかりを感じた。 「お嬢さん、こんな場所で何を?」 「…………………」 返事を返せなかった。 …………この人は何故、私を女だとわかってるんだろう。 しかも”お嬢さん”って呼んでるって事はまだ若いのだと承知して呼んでる。 目の前の人影、恐らく老婆だろうそれに違和感を感じた。 こちらから向こうは伺えない。 街灯がないのだ、向こうだってそうに決まってる。 「…………………」 無言で一歩後ずさった。 背中に冷たい汗がつぅっと伝うのがわかる。
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