第一章

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「良いから、婆に任せて此処はお行き。お嬢さんの匂いは上手そうだ、婆には堪えるが若いもんなら泣いて喜びよるだろう。お行き在るべき場所へ」 「在るべき…場所……」 「それともう二度と電車は乗らん方が良い」 次はないと思いなさい。 しっかりと耳に残ったその言葉が私を突き動かした。 無言で来た道を走り、駅に向かう。 途中震える足が何度も躓き、転びそうになったが堪えた。 誰だか知らない。 寧ろ何だか知らないが、私を助けてくれようとしたのは確かだ。 もしかしたら錯覚かも知れないけど、それほど優しい声色だった。
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