第十五章

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「理解するための名付けなのかも知れんが……その名を失う事こそが人間の闇じゃ」 「俺達は皆、名を持ってませんよ?」 老婆は頭部から角を剥き出しにする。 「我々は確かに名を持っとらん。だが異形と形作られ、わし達は人間共から多くの影響を受けてきた。そして────鬼と名付けられた。例外なく、この世の全ては闇に通じるのじゃ」 「此方の意志は関係なくってことですか?人間の意識がそうである限り……」 老婆はこくりと頷く。 やはり人間は災いでしかないのだと落胆しかない。 昔が懐かしい。 遙か太古だ。 名などなく、全ての異形と人間達が暮らしていたあの時が懐かし………………。 人間のような夢を描いてしまった。 またあの頃のように手を取り合えたらと…………。 あの人間達はまだ此処等で彷徨いてるのだろうか? だとしたら最後の頼みじゃ。
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