第十五章

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無闇に伝承しても恐らく無意味だ。 ”本物の物語”を伝承するからには本物を知らなければならない。 私はそんな思考の中、これをすることでどうなるかも理解していた。 感染者として菌をばらまくようなものだ。 恐らく私が伝承し、それを知識として認識してしまえば、この世界は容易くその者を此方へと導いてしまうことだろう。 ……………この世界に足を踏み入れ、最悪狂う者が出てくる。 それでも構わなかった。 それを伝承する事が私の全てだと、図々しいながらもそんな使命感を抱いていたのだ。 「沙耶、今の内に駅に──」 ぐいっと引っ張られた腕の先には、匠がいた。 その後ろには香織が───。 「………香織ちゃん、先に行ってて」 「えっ?」 「沙耶に付き合うから、ごめんね。気を付けて駅に行って」 私の表情から何か読み取ってくれたのだろう。 匠はポンポンと私の頭を撫でて、香織を駅に向かわせようとする。 訝しげな香織の表情…。 納得いってないのが手に取るようにわかる。 香織らしいな……。
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