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「沙耶、立って!!行くよ!?こんな所もう嫌!!」
気持ちは分かる。
でも─────────
「香織、後で行くから、絶対行くから駅で待ってて?」
押し黙ってしまった香織。
怒ってるのか戸惑ってるのか…それすらわからない。
気になるのは、香織の表情じゃなくて今は父とあの鬼の老婆だから。
一瞬だけ香織に向けた視線を外して、私はすぐに視線を元に戻す。
こうして隠れて見聞きしてるのさえ疎まれる。
なんなら出て行って真っ正面を陣取って見聞きしたい。
一字一句、逃さぬように聞きほれる。
物語の手掛かりがするりと聞き逃してしまわぬように…。
そんな私に痺れを切らしたのか、香織は匠を押し退けて私の両頬を包み込んで視線を合わせてくる。
「……………香織?」
戸惑う私。
香織がこんなにも眉をしかめてるのを初めて見た。
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