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「…………………」
静かな沈黙。
そして静かな侵略。
闇は確実に老婆に迫ってた。
遠目、近目問わず、それは認識できた。
老婆も知っていながら、にたりと牙を見せて笑む。
「のう、闇よ。話すことさえできないのかね?」
「あはははひははハハははひひっははは」
「はぁ……………」
吐き出されたため息は、落胆だった。
何故闇に振れた者のみならず自身も狂うのか……。
所詮、人間だ。
構わないが…不思議だ。
「───────っ?!!」
声を押し殺したのは沙耶だった。
森の中、会話を聞くにはそれなりに近い草木に紛れて身を隠してる沙耶の視界に、それははっきりとうかがえた。
「……………幽霊?」
それにしては随分と黒い。
全身黒付くめだ。
青白い肌にそれは良く栄えた。
それが老婆の背後に突然わいて出たのだ。
「やぁ、鬼の老婆よ。実に久方振りじゃないかね?」
この場に似使わない優雅な言葉と共に──────。
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