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私の思考を知ってか知らずか、彼女は高らかに唄う。
「魔女だよ、誰が初めに呼んだのかわからない。私は魔法を使うことも黒猫と話をすることも箒に跨がって空を飛ぶこともできない………」
でもね。
「魔女なんだよ」
細められた瞳が物語る。
最大限までつり上がった口角が示す。
「私はあなた達が思い描く魔女じゃない、だけどこの異世界と現実を見据えるこの目は明らかに魔女と呼ぶに相応しいんだよ」
それはそれは嬉しそうに小さな子供が笑うように彼女は笑うのだった。
「魔女はね、この世のありとあらゆる異常を認識できるの。ねぇ、伝承者さん」
一拍置いて私をその瞳で見据える。
「素敵だと思わない?」
ふふふふふふっと彼女の声だけが木霊する。
彼女は異常だ。
そんな魔女を無視して、悪魔みたいな男の瞳が私を射抜く。
「君に覚悟はあるかね?」
唐突に問われたそれに、眉をしかめた。
襲ってくるのは言いしれぬ恐怖。
彼は、無条件で恐ろしい存在だ。
カタカタと震える身体に力を込め、彼を見据えた。
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