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魔女は視界の端でクルクルクルクルと一人踊りながら遊んでるように見える。
その度にふわりふわりと舞う彼女の衣装は、中世ヨーロッパ……魔女狩りの本で読んだそれと似ていた。
幻想的な彼女に、よく似合う。
私は視線を闇に戻す。
「伝承者として…在り続けるかどうかより、此処に還ることに覚悟すればいいんですね?」
怖いけど、逃げない。
「ふっ、君にできるかね?多くの伝承者達が狂っていった中で、君にそれが可能かね?」
彼は一人、楽しそうだ。
つまりは私が望もうと、望まなかろうと、私は此処に還るのだと。
「もう一度問おう。覚悟はあるかね?」
静かに頷いた。
無意識に近かった気がする。
でも確実に頷いた。
それと当時に、身体の震えはなくなり、自分の中で何か得体の知らないモノを感じた。
それも一瞬で、ずあっと強い風が吹き抜けて、舞う砂埃に無意識に目を瞑った。
耳を掠めるのは異端者である魔女の笑いと、そして───
悪魔みたいな闇の笑い声。
風が止み、目を開けたとき、私だけがぽつりとだだっ広い砂地に佇んでた。
父もいない。
老婆もいない。
悪魔みたいな闇も、魔女も。
だけど耳にこびり付いた笑い声はいつまでも私の鼓膜を刺激するのだった。
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