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悲しみはなかった。
自分でもわからない。
ただ父がいないことに、悲しみはなかった。
恐怖もなかった。
これで帰れるのだという喜びもなかった。
今の私は、言うなれば何かを欠落した無感動さを醸し出してるに違いない。
ただ全ての感情が欠落したと取っていいほどに、私は何も感じてなかった。
ただ、懐かしむような瞳で空を扇いでいたのを私自身知る由もない。
どのくらいこうしてたのかわからない。
空を扇ぎ、空を見据えてた瞳を背後の駅に移した。
そこだけ異様に明るい、真新しい無人駅。
最早、本当に無人とかしたこの駅の名は”きさらぎ”。
村も呑み込まれておきながら、駅はその存在をありありと此処に示している。
くすりと口元を歪めた。
それは魔女や闇がそうであったように、歪んだ笑みであった。
それを沙耶は知らない。
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