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ちなみにスズキというのは僕の名前だ。表札にそう書かれていたので、僕は自分をスズキと名乗っている。
同様にコーポさんも表札から名前を取ったと言っているが、たぶんそれは家主ではなく、建物自体の名前のような気がする。まあ特に本人が気にしている様子もないので、深く言及したことはなかった。
「どうでも良いけど、どうして毎度、窓からなんです? 玄関から入ってくれば良いのに」
「なんか叩きたくなるんだよ、窓ガラスて」
「あーそれは分かります。なんかこう、ゾンビ心をくすぐると言うか」
「割れていないガラスを見ると、無性に割りたくなるんだよな」
「僕もショッピングモールを見つけると、用もないのに入りたくなっちゃうのですよね」
こういう感覚はおそらくゾンビ共通のものなのだろう。
理屈ではなく本能がそうさせる。
「それより起きているなら、早く飯を探しに行こうぜ。のんびりしていると食いっぱぐれる」
「そうですね。行きましょう」
これが早起きの理由だった。
明け方のうちに町に出て、まだ手つかずの食糧を探す。
虫や動物に夜行性のものが多いというのもある。早朝の狩りは昼間のそれよりずっと成功率が高いのだ。
「諺にもあるだろ。寝坊するゾンビは腐るのも早い、てな」
「初耳です。誰の言葉です?」
「俺が今、考えた」
コーポさんは大体いつもこんな調子だった。
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