4.地底迷宮

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 その時、僕はずっと頭の引っかかっていたものの正体に、ようやく気がついたのだ。 「そうか……僕はニアを守れるのが嬉しかったんだ」  僕はどこかでニアに引け目を感じていたのかもしれない。  旅の進路や狩りなどの役割分担も。これまで僕は彼女について歩くだけで何もしてやれなかった。  それが今回、初めてニアから頼られた。  彼女の期待に応えようと僕も必死になることが出来た。  僕はニアの旅のパートナーだ。  この美しい人間の少女と対等な存在なのだ。  その思いが、温もりの感覚にも似た謎の喜びの正体だった。 「なあニア、これからも僕に頼ってくれ。ニアを守れるのは僕にとっても嬉しいだ」 「ありがとう、スズキ。でも、私だって弱みばかり見せる気はない。――それにスズキは私を守るよりも、まずは女性に対するエチケットを覚えるのが先だと思う」 「えっ?」 「いくらスズキがゾンビだからって、女の子の荷物を勝手に漁るのはダメ」  僕は背筋に冷たいものを感じた。  バレていた……。  ニアは僕の密かな趣味に気づいていたのだ。 「別に触っても構わないけど、こそこそやったらやましいと思うでしょ。ちゃんと一言伝えること」 「いや、あれはその……でも、おかげでゾンビ犬を倒せたわけだし……」 「次また勝手に荷物に触ったら、本気で怒るから」 「はい……」  ニアにぴしゃりと言われ、僕はうなだれた。  うん。どうやら僕とニアが対等な存在というのは、やはり気のせいだったのかもしれない……。  彼女と肩を並べるには、僕には早すぎたようだ。 「今しばらくの間、地下に籠っていても良かったのかもしれないな……」  僕は思わず、そんな言葉を吐き捨てた。 ――4.了
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