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今風のカッコ良さげな茶髪を武道場の窓から流れる風に揺らされ、寒いだの邪魔だのと嘆いている。
「なんだよ、ただ見てただけじゃねえか」
そうだ、俺はいつものように実里を見ていただけだ。
知らない人に囲まれ、あたふたとしている実里を、拳を握り締め冷や汗を垂らしながら、見守っていただけなのだ。
「いやいや、にやけてるのをただとは言わねえだろ。完全に変質者の目だったぞ、このストーカー野郎」
「…………」
「イッテ、何すんだよ」
「悪い悪い、そこになんか変なものがあったものでな」
「おいおい、変なものってまさか、俺の足とかいうんじゃないだろうな」
「まさかまさか、こんなに黒い足がこの世に存在するはずがないじゃねえか」
「世間ではそれを『黒い足』じゃなくて、『靴下』って言ったと思うんだけどな」
容赦なく避難の言葉を浴びせる軼に、俺はとりあえず膝蹴りを見舞うことにした。
痛がる軼をほくそ笑み、実里の隣にいる少女に目を向ける。
軼は知ってのとおり、守護霊だ。つまり対象者が近くにいる。
その対象者というのが実里の幼い頃からの友達、奈津になる。
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