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ワイシャツの上から黒いジャケットとズボンを履き、ボーダーの入った赤いネクタイをビシッと決め、ちゃんと髪の毛もセットした、スーツ姿の自分。
おかしいところなど、何一つとして、ない。
――バシッ。
そこで、なぜか頭に感じる衝撃。さっきの仕返しかと疑問に思いながら、俺は抑えた頭を隣に向ける。
「『よし、大丈夫』みたいな顔してんじゃねえよ。キモいんだよおまえ」
「……そんなに罵倒すること無いだろ」
「変なおまえが悪い」
やはり、さっきの仕返しのようだ。
俺の言葉を真似ながらしたり顔で耳に手を当てる軼を、完全に無視しようと俺は心に決める。
だが、その前になぜ自分の格好が変なのかだけは知りたい。
「よし」
やっとピアスが決まったらしい軼を俺は見上げ、問いかける。
「で、なんで変なんだよ?」
「何が?」
冗談をかます軼に拳を振り上げ、ヘラヘラ顔の顔に一発入れてやろうかと考えるが、寸前で止め話の続きを促す。
「じゃあ聞くが、スーツってのは普通どんなやつが着る?」
やっと話しだし室内を見回す軼の目を追いなから、俺は考える。
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