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それに俺が反論しないでいると調子に乗ったのかどんどん口調は早く声は大きくなっていってやがるし……それに比例し、俺の手もどんどん震えていく。
ついに怒りが限界に到達し、手が出ようとしたとき……その手を止める手があった。
「まあまあ、そのくらいにしてやったら?」
高そうなスーツをビシッと決め、上品な雰囲気を身にまとっている。
「ほら、見てみろ!こういうのが決まっているっていうんだよ!」
いい手本を見つけたというように声を張り上げる軼。まだまだ大きい声に、俺は耳を塞ぎ軼のすねへ向かって足を振り下ろした。
「痛、さっきから何なんだよ」
「うざいっつってんだろ」
「おまえだって声大きかっただろ!」
「そんなのおまえの幻聴だろ」
「んな馬鹿な!」
軼はいつもこうだ。
感情が高まると自然と声が大きくなり、周りなんて一切気にしない。
軼だけならいざ知らず、俺まで釣られて大きくなるから、いつも言い訳に困ってしまうのだ。
「……まあ、確かに似合わないな」
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