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肩に手を置いてきた相手が、やっと収まったらしい口を開き、俺を見る。
「だよな!」
嬉しそうにはしゃぐ声を出す軼は、まるで子供のようだ。キラキラと純粋そうな目を男に向け、両手に拳を握っている。
「なんたって理玖は、低身長だし、童顔っぽいし、髪なんか銀髪で外人にしか見えない。そんな奴がスーツなんて似合うはずないんだよ!」
勝ち誇ったような表情で失礼にも人差し指を向ける軼に、俺は黙ってこの屈辱に耐えるしか手がない自分を恨めしく思った。
確かに、俺は低身長で、見た目は自分でも子供にしか見えない。
おまけに、この頭皮からしっかりと生えた銀色の髪。
人の視線がさっきから頭に集中し、ヒソヒソ声に心が痛む。
「せめてジャケットは取れよ。今から服を変えるってのも、無理だからな」
偉そうに眉を上げる軼に、男の含み笑いが舞い戻る。さっきよりも激しい声に、不思議そうな目を向けるのは軼と俺だけではない。
「おまえら、仲いいな。見てるだけでおもしろい」
ニカッ、と口の端を横に広げる男は、何だか距離を感じなくて、妙な気軽さが俺の口を軽くさせる。
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