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「二組」
「そうか、二組か……優雨は何組だったかな?」
どうやら、男の対象者は優雨という名前らしい。
守護霊は対象者から五十メートル以上離れてはいけないというルールがあるから、近くにいるはずだが……いや、この武道場がそんなに広いわけがないか。
でもここにいるということと、さっきの言葉から、新入生の守護霊で間違いなさそうだ。
こいつの対象者と実里が知り合いである可能性は一パーセントもないだろうが、俺はつたない命綱にすがるように、男の次の言葉を待った。
――そして。
「あ、二組だ」
願いは通じたのか、男がその言葉を口にし、俺は心の中で歓喜の声を上げた。
「よろしくな」
「おう、こちらこそ!」
自然に溢れる笑みは知らずのうちに注目を集め、ほんわかした雰囲気が辺りに漂う。
「あ、実里が行っちまう」
ふと向けた視線の先で、話し合いが終わったのか、列を作る生徒たちが武道場を出ていく様子が伺えた。
「じゃあな、軼」
一組はすでに移動し終え、続く二組も男子はもうすぐ全員行ってしまう。
なので軼に別れを告げ、俺と男はそそくさとそれぞれの対象者のもとへと向かった。
「お、番号近いな」
けれど、優雨と実里の番号は近いというより隣同士で、俺は続くラッキーに神への感謝を心の中で述べまくる。
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