出会いと始まり

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一瞬吐息がかかりそうな程近くまで来る姿にドキッとした後、実里の腕が自分の体に刺さった時に感じる、虚無感。 まさしくアメとムチな仕打ちに俺は一息つき、時計を確認しながら出て行く実里の後を追う。 「いってきます!」 二階にある実里の部屋から階段を下り、すぐにある玄関へ。そのまま靴を履き鞄を持ち直し、勢いよく実里は取っ手を引いた。 ドアの隙間から徐々に広がっていく青と白のコントラスト、今日この日を祝ってくれているかのように、綺麗な空。 背反し合っているそれらを優しく太陽が包み込み、道行く家々、電柱、コンクリート、端にある草や猫にまで、満遍なく注がれる。 もちろん前を歩いている実里にもその光は届き、ショートカットのサラサラの髪がほのかに漂う風に晒され、柔らかな雰囲気が辺りに漂う。 それは今日この日、入学式という輝かしい一日にピッタリな光景として、俺の目に飛び込んできた。 「新しい友達、できるかな」 真っ直ぐ前を向き、ずっと押し黙っていた実里が、か細い声でつぶやいた。 その声は雑踏の中ならかき消されているだろう程に小さく、言ったすぐあとに上を見上げていることから、答えを求めていない一人言であることが見て取れる。 「きっと、できるよ」 だが、俺は返事を返す。
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