出会いと始まり

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聞こえていないとわかっていながらも、いつもそうせざるにはおえないのだ。 実里の不安、緊張、ネガティブな考えを、俺の言葉で解消してあげられたらと考えるのも、一度や二度ではない。 (せめて、想いだけでも届いたらな) そんな無駄なことを考えながら、俺は実里の後ろから隣へと場所を移動し、じっと横顔を見つめた。 人通りの少ない道には、誰の視線も気にせずに色々と吐き出すことができる。 恥ずかしがり屋の実里は学校に着くまでの間、そんな新たな生活への始まりを、不安を、喜びを、空に漏らしていく。 その度に俺は「大丈夫」や「おまえは肝心な所で運がいいからな」などという励ましの言葉を述べながら、学校への歩を進めていった。 俺には、ある使命がある。 それは一人の人間からいついかなる時も離れてはいけない、その人間を生涯守り通さなければならない、というものだ。 生まれた時からそばにいて、死ぬ時までずっと一緒にいる存在。 片時もそばを離れないので、その子の事なら何でも知っている、ある意味ストーカーの上位に位置しているもの、それが俺というものだ。
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