第2章

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シルフィリア「いいよ、落ち着いて、話して・・・」 テオ 震えるおれの手を、その人は両手で包み込むように握る。 ・・・すごく落ち着いた。 おれは、その後も、話をした。 おれが生まれてすぐに死んだ母親のこと・・・。 会社の重役だったのに、リストラされた父さん、、でも、最初は優しかったこと。 いつの頃からか、言う事を聞かなかったりすると、暴力を振るうようになったこと。 ・・・全部、話した・・・。 シルフィリア「本当に、辛かったね・・・」 テオ その人は、おれを優しく抱きしめる。 甘い花の様ないい匂いがした・・・。 シルフィリア「ぁ、ごめんね、名前、まだ言ってなかったね。わたしはシルフィリア」 テオ「・・・テオ、です」 シルフィリア「よろしくね、テオくん」 テオ「・・・はい、ぁ・・・」 テオ 安心したからか、おれの腹の音が鳴った。 ・・・少し、恥ずかしかった。 シルフィリア「ちょっと、待っててね・・・」 テオ そういって、シルフィリアさんは、奥に向かっていった。 おれは、少し顔を上げて、周りを見渡してみた。 外からは教会に見えたけれど、像とかは置いてなかった。 ふと、シルフィリアさんが向かった場所とは違う方に眼を向けた。 テオ「こ、ども?」 テオ ドアの隙間から、おれの様子を伺うように、小さな子供が見ていた。 そんな子供と眼を合わせている間に、シルフィリアさんが戻ってくる。 シルフィリア「ごめんね、はい、食べて」 テオ「ぁ、はい、ありがとう、ございます・・・」 シルフィリア「ん・・・どうしたの?」 テオ シルフィリアさんが、おれにクラムチャウダーの入った器を渡した後で ドアから覗いている子供に気がついて声をかける。 声をかけられた子供は、小走りで駆けてくると、シルフィリアさんに抱きつく。 少しの間、おれの事を見つめていたが、やがて、顔をシルフィリアさんの方に向ける。 シルフィリア「眼が覚めちゃった?・・・トイレ?うん、いこう。・・・テオくん、ごめんね、また少し、待っててね」 テオ「は、はい」 テオ 暖かくて、美味しそうなクラムチャウダーを見つめて、おれは・・・。 優しかった父さんを思い出していた。 最初は貯金もあったから、こんなのも、食べてたな・・・。 シルフィリア「ごめんね、待たせて・・・。・・・食べててもよかったんだよ?」 テオ「ぁ、おかえり、なさい・・・」 シルフィリア「食欲が、でない?」
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