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蝉の音が静まり、リンリンと涼しげに鈴虫が鳴き出す。
橙のひまわりが追いかけっこをやめると、闇夜の紫陽花がしっとりと憂いを増した。
暗闇に映える店みせの提灯が赤く揺れ
街は歓喜の声であふれかえる。
煌びやかな打ち掛けに身を包み
薄い唇に紅を引く。
女に劣らぬ色香を纏い、鋼の檻から今日も男を誘う。
一夜限りの情と欲が渦巻く、華やかなる幻想世界。
「ようこそ、おいでくんなまし。」
ここは、男の廓
ーーー紫陽花楼(しょうかろう)
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